1967(昭和42)年11月
1967年9月4日、S40系クラウンシリーズがフルモデルチェンジを行った際、クラウンエイトのモデルチェンジは見送られ、新車種「センチュリ」として9月25日に発表され、11月に発売されました。
■1967(昭和42)年11月 発売
・外観
全長4,980mm(クラウンエイト比、+260mm)
全幅1,890mm(クラウンエイト比、+45mm)
前後ガラスはハメ込み式が主流だった当時、センチュリーは接着式+モールで風切り音の低減などを図っています。今でこそVGの風切り音はかなりうるさく感じますが、当時は特筆すべき静寂性だったのでしょう。
※参考・・・VG20の特徴(テールランプ)
ボデーカラー
名称 | 説明 | A仕様 | B仕様 | C仕様 | D仕様 |
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カムイ・エターナル・ブラック (神威イターナル・ブラック) [神居エターナル・ブラック] Kamui Eternal Black |
人間の立ち入ることをかたくなに拒む神威岬の、黒そのものの黒。その神秘へのあこがれから発想した、永遠の深いブラック。 ※eternal:永遠の |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
マシュー・カーム・ブルー (摩周カーム・ブルーM) [摩周カーム・ブルー] Mashu Calm Blue |
数々の伝説を秘めて、静かに青をたたえる摩周湖。その水の透徹さ、青さ。凛とした気品をもちながら、静まりかえったブルー。 ※calm:落ち着いた |
× | × | 〇 | 〇 |
ヘイアン・グレーシアス・マルーン (平安グレーシアス・マルーン) [平安グレーシァス・マルーン] Heian Gracious Maroon |
平安の古い都を彩る落ち着いた色調。時代と歴史が磨き上げた柱や羽目の輝き。渋さと、洗練された感覚がつくり出す、優雅なマルーン。 ※gracious:優雅な |
〇 | × | 〇 | 〇 |
ウンゼン・ミスティ・グレー (雲仙ミステイ・グレーM) [雲仙ミスティ・グレー] Unzen Misty Grey |
霧が渦巻く雪仙の山々は神話の世界。日本の創世紀、神々の伝承を生んだその山のイメージをモチーフにした、霧のようなグレー。 ※misty:霧のような |
× | × | 〇 | 〇 |
フジ・ノーブル・ホワイト (富士ノーブル・ホワイト) [ 〃 ] Fuji Noble White |
いつも白い雪を頂く霊峰富士。仰ぎ見る人びとの心を清らかに洗う純白の雪。その清例な美しさを思わせる、高貴なホワイト。 ※noble:高貴な |
〇 | × | × | × |
ホーライ・ルーシィト・グリーン (鳳来ルーシツト・グリーンM) [蓬来ルーシッド・グリーン]※中期 [蓬莱 〃 ]※後期 Horai Lucid Green |
夜ともなれば仏法僧の声がきかれるという、鳳来山。冴えわたった深い緑の山。そのけがれない美しさを再現した、清らかなグリーン。 ※lucid:透明な、澄んだ=清らかな |
× | × | 〇 | 〇 |
名称について
→1行目のカタカナはセールスマニュアルと前期カタログでの表記
→2行目の()内は整備書での表記
→3行目の[]内は中期、後期カタログでの表記
「カムイ」の説明にある神威岬は積丹半島の岬、「神居」になってしまうと神居古潭(旭川市)で、直線距離で150km以上も離れた全く別の場所になってしまいます。(VG21前期カタログまで神居表記でした)
「ホーライ」においても、説明にある鳳来山は鳳来寺山(愛知県)のことで、仏法僧とはコノハズク(県の鳥)の別名です。「蓬莱」になってしまうと滋賀県の蓬莱山で、全く別物になってしまいます。
カタログ製作の担当部署が適当なのか、伝達がうまくいっていないのか、チェックもしないのか?気になりますが、もう半世紀も前の話です。
・内装
・エンブレム
フロントグリルには鳳凰のエンブレム
Cピラーエンブレム
後席トリムにもエンブレムが付きます。
フロントグリル、Cピラー、後席木目パネルのエンブレムはグレードによって色が変わります。
グレードについては後述しますが、A/Cタイプは碧色「アクアマリン」、Bタイプは濃紅色「クリムソン」、Dタイプは紫色「バイオレット」になり、Cピラーエンブレム枠の文字も変わります。
・グレード
A仕様
「ご自分で運転を楽しむ方のセンチュリー」
エンブレムは碧色「アクアマリン」
本皮バケットシートにヘッドレスト・シートベルト付、フロア4MT、リミテッドスリップデフ標準装備で新車価格238万円は当時の2000GTと同価格(!)
他車種の電圧計と燃料計がある場所にタコメーターが付き、電圧計と燃料計はコンソールボックス内に付きます
B仕様
「重厚で気品に満ちたセンチュリー」
エンブレムは濃紅色「クリムソン」
ファブリップ張りのシート、コラム3MT、全窓手動、コンライト無しなど、いわゆる廉価版です。
C仕様
「豪華でフォーマルなセンチュリー」
エンブレムはAタイプ同様、碧色「アクアマリン」
高級布地張(トッパー・ファブリック)シート、コラム3AT、要はAタイプの豪華版的な位置付けです。
D仕様
「もっとも誇り高い車」
エンブレムは紫色「バイオレット」
Cタイプにさらに各種のパワー装備を持ち、エアコン、エアピュリも標準装備の最上位グレードです。
・エンジン
アルミ合金製V8、2,981cc、150PS。冷却ファンは鋼板プレス製の5枚羽。
■車両仕様
1967(昭和42)年12月整備書より抜粋
車両型式 | VG20-A | VG20-B | VG20-C | VG20-D |
---|---|---|---|---|
価格 ※東京地区 | 238万円 | 208万円 | 228万円 | 268万円 |
長さ(mm) | 4,980 | ← | ← | ← |
幅(mm) | 1,980 | ← | ← | ← |
高さ(mm) | 1,450 | ← | ← | ← |
車両重量(kg) | 1,700 | 1,665 | 1,700 | 1,800 |
乗車定員(人) | 5 | 6 | 6 | 6 |
車両総重量(kg) | 1,975 | 1,995 | 2,030 | 2,130 |
ホイールベース(mm) | 2,860 | ← | ← | ← |
トレッド前輪(mm) | 1,520 | ← | ← | ← |
トレッド後輪(mm) | 1,540 | ← | ← | ← |
重心高さ(mm) | 550 | ← | ← | ← |
最低地上高(mm) | 175 | ← | ← | ← |
最大安定傾斜角度 (度) |
50 | ← | ← | ← |
最高速度(km/h) | 170 | ← | 160 | ← |
舗装平坦路最大荷重時燃料消費率(km/L) | 10.0 | ← | 8.5 | 8.3 |
制動距離(初速50km/h) (m) | 14 | ← | ← | ← |
登坂能力(sinθ) | 0.416 | 0.388 | 0.439 | 0.418 |
最小回転半径(m) | 5.7 | ← | ← | ← |
客室内側寸法 | ||||
長さ(mm) | 1,970 | ← | ← | ← |
幅(mm) | 1,520 | ← | ← | ← |
高さ(mm) | 1,110 | ← | ← | ← |
オーバーハング (バンパを除く) |
||||
前(mm) | 755 | ← | ← | ← |
後(mm) | 1,255 | ← | ← | ← |
タイヤサイズ | 7.35-14-6PR | ← | ← | ← |
タイヤ空気圧(前後輪)(kg/cm2) | 2.1 | ← | ← | ← |
■エンジン関係仕様
1967(昭和42)年12月整備書より抜粋
エンジン本体
型式 | 3V |
---|---|
内径×行程(mm) | 78×78 |
総排気量(L) | 2.981 |
圧縮比 | 9.8 |
圧縮圧力(kg/cm2) | 12.5(250rpmで) |
最高爆発圧力(kg/cm2-rpm) | 52-3,600 |
最高平均有効圧力(kg/cm2-rpm) | 10.08-3,600 |
最大出力(PS/rpm) | 150/5,200 |
最大トルク(m-kg/rpm) | 24/3,600 |
全負荷時最小燃費率(g-PS-h―rpm) | 220―3,600 |
機関寸法 | |
長さ(mm) | 782 |
幅(mm) | 700 |
高さ(mm) | 737 |
整備重量(kg) | 225(A,B)、215(C)、235(D) |
ピストンリング数 | |
圧力 | 2 |
油 | 1 |
エンジン関連
点火装置 | |
---|---|
点火方式 | バッテリコイル、セミトランジスタ式 |
点火時期(上死点前 度/rpm) | 10/550 |
点火順序 | 1-8-4-3-6-5-7-2 |
点火コイル | |
型式 | 3V |
製作会社 | 日本電装 |
配電器 | |
製作会社 | 日本電装 |
点火進角装置型式 | 遠心ガバナおよび真空 |
点火プラグ | |
型式 | W17EW |
製作会社 | 日本電装 |
寸法(mm) | 14×19 |
火花すき間(mm) | 0.8 |
燃料装置 | |
気化器 | ロチェスタ式 |
製作会社 | 愛三工業 |
送風方向 | 下向き |
潤滑方式 | |
潤滑方式 | 全圧送 |
油ポンプ型式 | トロコイドポンプ |
油こし器 | そ紙式 |
オイルパン容量(L) | 5 |
冷却装置 | |
冷却方式 | 強制循環水冷式 |
放熱器型 | コルゲートフィン型、クロスフロー式 |
冷却水容量(L) | 13.4 |
水ポンプ型式 | 遠心式 |
サーモスタット型式 | ワックス |
蓄電池 | |
電圧(V) | 12 |
容量(AH) | 45 |
充電発電機 | |
製作会社 | 日本電装 |
発電方式 | 交流 |
電圧(V) | 12 |
容量(kW) | 0.78 |
始動電動機 | |
製作会社 | 日本電装 |
電圧(V) | 12 |
出力(PS) | 1.4 |
シャシ関連仕様
車両型式 | VG20-A | VG20-B | VG20-C | VG20-D |
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動力伝達装置 | ||||
クラッチ | ||||
型式 | 乾式単板 | ← | ― | ― |
クラッチ版枚数 | 1 | ← | ― | ― |
ライニング(内径×外径×厚さ) (mm) |
224×160×3.4 | ← | ― | ― |
表張面積(cm2) | 193×2 | ← | ― | ― |
流体継手 | ||||
型式 | ― | ― | 3要素1段2相式 | ← |
製作会社 | ― | ― | アイシン精機 | ← |
変速機 | ||||
型式 | 4段オールシンクロメッシュ | 3段オールシンクロメッシュ | 前進3段全自動 | ← |
操作方式 | フロアシフト | リモートコントロール | ← | ← |
変速比 1速 | 3.673 | 3.059 | 2.400 | ← |
2速 | 2.114 | 1.645 | 1.479 | ← |
3速 | 1.403 | 1.000 | 1.000 | ← |
4速 | 1.000 | ― | ― | ― |
後退 | 4.183 | 4.079 | 1.920 | ← |
減速機 | ||||
歯車型式 | ハイポイドギヤ | ← | ← | ← |
減速比 | 3.545 | ← | 3.900 | ← |
操向装置 | ||||
歯車型式 | ボールリサーキュレーティング式 | ← | ← | ← |
歯車比 | 19.8 | ← | ← | 18.45 |
かじ取り角度 | ||||
内 | 39°15′ | ← | ← | ← |
外 | 30°50′ | ← | ← | ← |
パワーステアリング型式 | ―(特別注文) | ―(特別注文) | ―(特別注文) | インテグラル |
ハンドル外径(mm) | 415 | ← | ← | ← |
前車軸型式 | トレーリングアームオレオ型 | ← | ← | ← |
後車軸型式 | 半浮動 | ← | ← | ← |
ブレーキ装置 | ||||
●主ブレーキ | ||||
ブレーキの種類 | ||||
前 | ツー リーディング |
← | ← | ← |
後 | リーディング トレーリング |
← | ← | ← |
表張寸法 (幅×厚さ×長さ) |
||||
前(mm) | 55×5×272 | ← | ← | ← |
後(mm) | 44.5×4.8×272 | ← | ← | ← |
表張表面積 | ||||
前(cm2) | 299×2 | ← | ← | ← |
後(cm2) | 242×2 | ← | ← | ← |
倍力装置型式 | 真空サーボ | ← | ← | ← |
真空ポンプ(圧縮)型式 | ベーンタイプ | ← | ← | ← |
最大油圧(kg/cm2) | 154 (踏力100kgで) |
|||
●駐車用ブレーキ | ||||
ブレーキの種類 | 機械式後2輪制動 | ← | ← | ← |
表張寸法 (幅×厚さ×長さ) |
44.5×4.8×272 | ← | ← | ← |
表張表面積 | 242×2 | ← | ← | ← |
懸架方式 | ||||
前輪懸架方式 | 独立懸架空気式 | ← | ← | ← |
後輪懸架方式 | トレーリングアームリンク式 | ← | ← | ← |
コイル寸法 (線径×中心径×自由長) |
14.7×110.0×348.5 | ← | ← | ← |
ショックアブソーバ型式 | ||||
前 | 油圧複動 | ← | ← | ← |
後 | 油圧複動 | ← | ← | ← |
スタビライザ型式 | ||||
前 | トーションバー式 | ← | ← | ← |
□1968(昭和43)年11月頃、一部改良
主な変更点
・フェンダーウインカー追加
→1969(昭和44)年10月の保安基準改正で側面の方向指示器が義務化
マフラー出口が外側に移動し、それに伴いリアバンパーの形状も変更されました。
・内装一部変更
エアコン吹き出し口の形状、操作パネル
→トヨタ博物館のVG20に、フェンダーウインカーが無いのに内装がこれと同じなので、これ以前に変更になった可能性があります。
前席ヘッドレスト(以前はAタイプのみ)
などが変更されました。
□1969(昭和44)年11月頃、エンジン出力アップ
正確なタイミングがわかりませんが・・・
1969(昭和44)年8月発行のカタログでは「150PS」、冷却ファンは「大型5枚羽」
1970(昭和45)年10月発行のカタログでは「170PS」、冷却ファンは「大型7枚羽」と記載されています。
冷却ファンのパーツ品番が変わったのは1969(昭和44)年11月になっていて、キャブレタも10月に変更があるので、これが出力アップのタイミングだと思います。
冷却ファンは樹脂製7枚羽になりました。
□1971(昭和46)年10月
Aタイプ廃止
□1972(昭和47)年5月(頃?)
レギュラーガソリン仕様(3V-R仕様)追加
→受注生産、販売価格は標準車(ハイオク)と同価格
冷却ファンが樹脂製8枚羽に変更されています。
■1973(昭和48)年4月
昭和48年排ガス規制適合、4Vエンジン(V型8気筒3,376cc)、外観一部変更などでVG21にマイナーチェンジ